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ガーコの思い出

No.186(2012.09.06)


私が小学校低学年児童だった頃に近所の妙正寺公園周辺で、男の子の大事なところをちょん切る、という恐ろしい通り魔事件が発生していた。

直に事件は解決し、犯人はノイローゼになった大学受験生だったと記憶している。

そんな安心して遊べる場所に戻った妙正寺公園に頻繁に出向いたのは、私が小学校中学年だった時期だ。

今となっては当時何をして友達と遊んでいたのかをすっかり忘れてしまっているのに、ガーコと遊んだことだけは何故かはっきりと覚えている。

ガーコとは公園に散歩で連れられて来ていた犬だ。

現在の小学生だったら母親から近付かないように注意されるであろう風体の野球帽をかぶった中年のおじさんが連れて来ていた。

初めから公園に居るのではなく、皆で遊んでいるとしばらくしてから来ることが多かった。

そのおじさんが来ると遊ぶのをやめて、おじさんの座ったベンチまで嬉々として走って行った。

犬が苦手な友達を除いて皆で向かったように思うが、定かではない。

そのおじさんは、ベンチに腰かけるとガーコを放して小さなゴムまりを遠くに投げるのである。

すると即座にガーコは全力疾走してゴムまりに向かい、ゴムまりをくわえて戻ってくる。

今考えると大したことではないのだが、純だった私は初めてそれを目の当たりにした時感動した。

おじさんは私達子供にもゴムまりを投げさせてくれた。

ガーコが自分のところにゴムまりをくわえて帰ってくるとそれだけで嬉しかった。

ガーコは大きさが中の小で足が短く、コーギー系の雑種のような容姿で、見た目はとびきりかわいいというほどでもなかった。

それまでの私も犬は大好きだったが、外見のかわいさに魅かれて好きだっただけで、犬と意思の疎通のような体験をしたことはなかった。

ガーコと出会った数年後に、両親に懇願した結果初めて犬を飼うことを許された。

数年前に帰京した際に、小学校中学校時代の同級生数人にガーコの話をしてみたところ、当時一緒に公園で遊んだと記憶している同級生から記憶にないと言われた。

ネットで検索しても見当たらない。

なんだか悲しかったので、今回ネットに載せることにした。

今のご時世では、公園で野球はダメ、犬を放すのはダメ、変なおじさん(笑)には要注意、と安全第一なのは分かるものの、面白味のない日常になってしまったものだ。


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