先日昨年度の高額納税者、いわゆる長者番付が発表されました。
同じく税金に関連した納税組合について今回は取り上げます。 納税組合は行政機関が定めた地区ごとに設けられていました。 基本的には昔からの集落単位で地区割りされていて、あたかも地区民が自主的に組合活動をしているかのような体裁をとっていました。 しかし、どの地区にも存在していたことから推察されるように、明らかに行政側が主導して設置をすすめたのです。 何故そんなものが必要かお分かりでしょうか。 農家の現金収入はサラリーマンのように月極で確実に入ってはきません。 そのために行政で定めた納付期限までに納税用の現金を用意できない人が過去においてしばしばいたのでしょう。 そのような、行政側から見れば税金の「取りっぱぐれ」を防ぐために役人が考え出したようで、旧来の農村内の人間関係を上手く利用した実に巧妙な仕組だと感心します。 期限までの納税を地区民の連帯責任として守らせる、という方法がです。 もちろん「ムチ」だけでなく「アメ」も用意されています。 納税期限を厳守した組合には翌年度に報奨金が支払われます。 組合内ではそのお金を蓄えておき、期限までに納税用の現金を都合できない組合員の税金立て替えに充てるのです。 最終的に年度末に組合内で清算すれば済むわけです。 立て替えてもらう立場になった人にとってはありがたい制度だと言えるでしょう。 その反面税金を集金して納付するという仕事を地区内で誰かが行なわなければなりません。 普通そのような役は当番制で年度ごとに交代しながら務めます。 結果として各戸の納税額は組合員全員の知るところとなります。 プライバシーの喪失という問題は生じたものの、かつては官民双方にとってそれなりの存在意義はあったかもしれません。 が、農業の後継者不足を主因とした農村の過疎化がすすんだ現在、そのようなやり方を考え直す必要が生じています。 私がかつて住んでいたところでは、行政側よりむしろ地区民の側に守旧的な意識が強いと私は感じました。 行政としては税金が確実に徴収できればそれでよいのですから、地区民に改革の主導権があるのです。 もっとも、組合による税金の立て替えを利用する人が一人でもいるうちは現状維持、というのが農村の人間関係では暗黙の了解事項となるでしょうが。 もらえる報奨金はもらっておかないと損だ、という感覚もあるでしょうし。 それにしても所得税の徴収に関しては、サラリーマンがいかに冷遇されているかを再認識させられます。 さて、住民のなかの希望者が格安で旅行に行けるという行政がらみの行事が、東京都区部にさえあることを先年知り驚きました。 おそらく行政からの「アメ」を活用しているのだろうなと私は察しました。 知っている者だけが得をして、かつ決して他言はしない。 これはなにも田舎だけの話ではないようです。 |
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