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農村で暮らす (6)

No.62(2001.10.01)


新年度の地区集会を迎える前に、地区内のある家の結婚式の披露宴に招待されました。

私より少し年下のその家の長男は他県で就職していました。
そしてその土地の女性と結婚することになり、当面帰郷の予定はないものの昔風に言えば跡取り息子であるため地元でも披露宴をとりおこなうことにしたようです。

その時点ではまだごく近所の数軒としかお付き合いをしていなかったので席上では私の知らない方達ばかりに囲まれ緊張していました。

列席者の方々はお互いに顔見知りなので私を見ればあれが噂の東京から来た人間かとすぐに分かったものと思われます。

宴もたけなわとなってきた時に突然同年代のある男性から次の出し物に一緒に参加するよう促されました。

地域に溶け込もうという気持ちでいた私はわけがわからないまま控え室まで同行しました。

そこでは既に数人の男性が着替え始めていて、なんでも結婚式で恒例の「ひょっとこ踊り」をここの青壮年団でするとのこと。

私は踊れないと辞退しようとしましたが、振り付けなどは適当でよいから一緒に踊れと言われ覚悟を決めました。

ねじりハチマキにひょっとこのお面、上はハッピで下は下着の上からフンドシというそれだけでも十分笑われる格好でした。

十数人の男達に混じって宴会場を踊って一周した際のことは酔いも手伝い頭の中が真っ白になっていたためよく覚えていません。

ただ、もらい水をしていた家のお婆さんが体形から私だと分かったらしく、気の毒げに私を見ていたことは妙に印象に残っています。
その場でごく少数の既に知っている人の一人だったからかもしれません。

催事場での披露宴が終わると場所を地区内のその家に移して近親者と地区の人達でまた宴会が始まり、この時初めて近所の家に上がったと記憶しています。

またこの場には連れ合いも他家の女性と同様に裏方として手伝いに来ました。

この「ひょっとこ踊り」に参加したことで地区に正式に加入する前に青壮年団に入ることになってしまいました。


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