10月18日(土) |
非日常か日常か、音楽とは 新宿のヴァージン・メガ・ストアで買ったpedro aznarのもう1枚の作品「CUERPO Y ALMA(肉体と魂)」を聴きました。 1998年に制作されたアルバムで先日聴いたライヴでも演奏されていた楽曲が3曲収録されていました。 彼はpat methenyとの共演以降に中南米伝統音楽復刻草の根運動家的活動に軌道修正したようです。 人工エネルギーの力を借りた大音響大規模なコンサート・ツアーを経験して何か疑問に感じるものがあったのでしょうか。 アメリカ合衆国に伝統を破壊され続けている国に住む私は、歌詞カードを読みながら聴いていて色々と考えさせられてしまいました。 大規模ロック・フェスティバルの原点であるウッドストック・フェスティバルが開催された時にトイレの不足が大問題になったと記憶しています。 主催者が、飲んで食べて排泄するという人間の日常生活の基本を無意識のうちにおろそかにしていたのではと推察します。 現代の大規模な音楽イベントも当時と同様に非日常を堪能することがその存在意義であると思われます。 テクノ系音楽の反復による高揚感にも魅力を感じてしまう私は、自身の日常生活ですら電気エネルギーなしでは成り立たないことに思い至り、複雑な心境になりました。 人工エネルギーに依存した便利さしか知らない先進国の人間が自然の中で生き残れるのかどうか。 ふと考えてみると、目に見える表向きはきらびやかで楽しい反面、それがどのような仕組で支えられているのかはまったく見えないというディズニーランドのような社会は不気味です。 短絡的に自然回帰を訴える気はありませんが、文明の利器なしでも生きていける術は身につけておかなければ危ない時期にさしかかっているように感じます。 おっと、久々に大風呂敷を広げてみました。 豊かな自然に恵まれていたこの国でそこいらの川の水を飲めないってぇ~のは恐ろしいことなんです。 |
10月13日(月) |
最優秀作品もう一枚 前々回にrichard bonaの最新作が私にとって本年の最優秀作だと述べた舌の根の乾かぬうちに、もう1枚追加させていただきたいと思います。(苦笑) 聴き終えたあとしばらく放心状態に陥ってしまったpedro aznarの「en vivo(ライヴ)」です。 本国アルゼンチンでは昨年発売されたようですが(有)中南米音楽が輸入販売したのは今年に入ってからのようなので付け加えます。 二人の共通点として私がpat methenyと彼らの共演をきっかけに知るに至ったという経緯があります。 さらに二人ともマルチプレーヤーであるものの基本的にはベーシストでありフレットレスベースの名手、かつ天賦の美声に恵まれているところまで似ています。 かつて(現在も)欧米白人から酷い仕打ちをされた大陸出身であることも同じです。 苦悩、怒り、憤り、哀愁という要素も強い中南米の音楽は、言葉の意味が分からないにもかかわらず直接魂に訴えてくる強さがあります。 言論の自由がない状態の方が音楽に託すものが切実になるのでは、と考えさせられもしました。 いつだったか彼が来日した際のインタビュー記事に、「日本に来ると自分の前世は日本人だったのではないかと感じる」、というちょっとあぶない発言がありました。 確かに感性に似かよった部分があるのかもしれません。 そんな訳で、中南米の音楽はちょっとねぇ、と敷居の高い方にもおすすめします。 |
10月10日(金) |
偽リ スティーブ・ハウの息子THE VARGE(崖っぷち野郎か)がyesの楽曲をリミックスしたというその名もそのまんま「YES REMIXES」を聴いてみました。 ファン層の高齢化を意識してか(笑)とても分かりやすいリミックスに仕上がっています。 空疎な机上の元音源いじりに終わることが多いリミックスという手法を用いた熱烈なファン対象限定商品として制作されたとすると、その意義があるのかないのか微妙な位置付けをされる作品とも言えます。 ただし元の楽曲群を覚えてしまうくらい聴き込んだファンであれば、そのような存在意義の不明確性やリミックスに対する抵抗感も忘れさせてくれる程度の出来上がり具合か、とも思われます。 まあともかく彼らの熱心なファンでない方々は買わない方がよいかもしれません。 曖昧評価三連発失敬。(苦笑) 私の個人的見解として、同じスティーブでもスティーブ・ヒレッジがSystem 7名義でかつてのプログレ時代の自身の楽曲を自らリミックスしたとしたら、もっと時代に合った作品になると思いました。 |
10月2日(木) |
心を動かされる 今年も残るところ3か月となりましたが早くも私にとって本年の最優秀作品決定か、と思うくらい最高に良かったです。 先月発売されたrichard bonaの3枚目のソロ・アルバム「Munia/The Tale」です。 前2作も良い作品ではあったものの今作ほどの衝撃は受けませんでした。 アフリカ大陸出身でありながらジャンルを問わずに世界中の音楽からそれぞれの魅力を吸収し、かつ自分のものにしてしまっているところは新世代ならではでしょうか。 ブライアン・イーノの影響としか思えない雰囲気を醸しだしてしんみりする楽曲から思わず踊りだしたくなる躍動感溢れる楽曲まで変化にも富んでいます。 良い音楽ならジャンルにはこだわらないという方なら一度聴いてみてください。 ただ、国内盤にボーナス・トラックとして最後に収録されているジャコパスの楽曲「Liberty City」のライヴ演奏は、田舎に住んでいるために彼のライヴを生で見るのが難しい私のような人間には有り難いのですが、アルバムの流れとは無関係なので続けての鑑賞はおすすめできません。 |