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田舎の個人情報

No.92(2002.08.13)


今月の5日から住民基本台帳ネットワークシステムの運用が開始され、我家にも11桁の数字の通知が届きました。

今のところ扱うのは最小限の個人情報に限られているものの将来どのように個人の情報が集約されていくのかは不透明です。

そのように大きな危険性を孕むシステムであるにもかかわらず国民全体が強く反対の意思表示をしないのは何故でしょうか。

私は、ムラ社会が色濃く残っている田舎では個人情報が筒抜けであるという現実によって、住民のプライバシーに対する鈍感さが醸成されていることもその一因だと考えています。

地方公務員の守秘義務などは有名無実だと以前に別項で述べました。

これは公務員に限ったことではなく、同じく本来は守秘義務を果たすべきJAや地方の金融機関、郵便局の職員にも多かれ少なかれ当てはまる事実です。

私自身が、訊ねもしないのに隣人から「○○さんは借金が返せないから山を売った」と聞かされたことがありました。

もちろんこれはその隣人が職務上知った個人情報で、この程度は田舎では「常識」です。

また、田舎では衆人の視線が監視カメラの代役として機能しています。

私は顔見知りに合うとどうしても一緒に飲まなくてはいけなくなる風習が嫌で、農村に住んでいた頃は隣町の居酒屋さんまで足をのばしていました。

後日隣人から「ずいぶん遠くまで遠征しているな」と指摘され、驚きました。

見ていた誰かが発信源で、その情報は確実に伝達されたわけです。

これは私がよそ者だったからという理由からではなく、田舎ではお互いに監視しています。

結果として田舎ではプライバシーは限りなく失われていきます。

もっとも漏れた個人情報は噂話の種になるくらいですから、そのような環境で暮らしていけるかどうかはそれに慣れることが可能な神経の太さを持ち合わせるかどうかで決まります。

そこでの個人情報漏れで起きる最悪の事態でもせいぜいムラ八分でしょう。

それに比して住民基本台帳ネットワークシステムはどうでしょうか。

必ずしも善人ばかりではないことはもはや周知の事実である権力者が一方的に個人情報を管理できる。

仮に極悪人がある個人の弱みを握ったとします。

その人が財産資産をもっていたら脅かされ奪い取られるでしょう。

その人が資産はないがそこそこの能力をもっていたら共犯者として働かされるでしょう。

その人に財産も能力もなかった場合は生命保険をかけるかあるいは金融機関から借りられるだけ金を借りさせられた後に殺されるでしょう。

既に「民間」ではこの種の事件が続発していますね。

このように今後の展開によっては田舎の噂話の種とは次元が異なる恐ろしい結果をもたらす可能性が大きいシステムなのです。

人に知られたら後ろめたく感じるような秘密は全くないという聖人君子のような方は何も心配する必要はないでしょう。

そうでない人だったら危機感をもつのが普通だと思うのですが。


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