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農村で暮らす (16)

No.72(2002.01.17)


各地の成人式の模様をマスコミが伝える際に男性だったら紋付袴姿、女性なら振袖姿の新成人が好んで被写体に選ばれます。

前回述べた私が出席した式での男性新成人の中にも紋付袴という出で立ちもところどころに見受けられました。

一方女性の場合はどうだったかというとほとんど全員振袖姿で、たった1人だけだった洋服姿の女性が逆に目立って気の毒に感じたことが記憶に残っています。

そんな状態ですから女の子のいる家庭でその子が成人する年になった時の親は大変です。

経済的負担は当然大きいですし、女親の場合は娘と一緒に準備に付き添うわけですから式に送り出すまでてんてこ舞いです。

小さな町村において、まとまった数の女性たちが一斉に髪をセットし入念に化粧をし着物を着付けてもらう、というのは大変なことなのです。

そのような仕事にたずさわっている人達にとっては年に一度の書き入れ時ですから無理をしてでもこなします。

土用の丑の日のうなぎ屋さん、またはクリスマスのケーキ屋さん、といったところでしょうか。

夜中の2時にしか美容室の予約が取れなかった、という話をその年に耳にしました。

凄いことになっているなと驚いたのはよそ者の私だけで、当地にいる人達にとっては毎年のことで当たり前という感覚でした。

また女性の場合は必ず写真屋さんでその姿を写してもらいます。

見合い結婚は田舎でも少なくなっているので、記念にという意味での撮影なのでしょう。

写真屋さんにとっても大盛況でホクホクの1日なのです。

要するに「成人の日」が地域社会に及ぼす経済効果は相当大きいのです。

昨年新成人が式で大騒ぎをした際に、そんな行事なら止めてしまえ、という論調がすぐさま立ち消えになったのにはそんな背景があるのです。

そんな舞台裏があることを知っても、季節感が希薄になったなかで若者の晴れ姿を目にするのは悪くないと個人的には思います。

たとえ彼らの髪の色が黒くなくても。


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