近所の家にはガス(外釜)と薪(五右衛門)の両方で沸かせる風呂もありましたが、私が使っていた五右衛門風呂はガスは使えず薪を燃やして沸かすものでした。 薪を燃やすといっても、経験のない都会育ちには最初はなかなか上手くできませんでした。 たき火のように四方から空気が供給されるのなら燃やすのはさほど難しくありません。 たて20cmよこ30cmくらいの小さなたき口から、浴槽の下を通って煙突へと空気は送られ、薪はたき口から50cm以上奥で燃やさなければなりませんでした。 しかも、たき口は地面からわずか5cm上にあったのです。
当初は古新聞をたき付けに使っていましたが、そこから太い薪を燃やすまでが失敗の連続でした。 少しでも薪が湿っていると、中の水分がシューッと音を立てて蒸発するばかりで温度が上がりません。 また、十分に乾燥させた薪でも太いものだと燃え始めるまでにかなりの火力が必要です。 細めの薪を最初に燃やしてその火力で太い薪に着火するのですが、これがそう簡単にはいかないのでした。 そんなわけで始めの数ヶ月間は火に付きっ切りというありさまでした。 近所の人達にも聞いてみたのですが、なんせ彼らは子供の時から風呂たきをしているので、どこがどう難しいかが分からないらしく、要領を得ない答しか返ってきませんでした。 |
前に戻る | 目次へ戻る | 次を読む |