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治療と延命

No.125(2025.05.11)


国会で高額療養費制度の見直しを進めようとしたところ、猛烈な反対にあって先送りになったことを知ってはいました。反対派の中には、私たちに死ねというのか、という少々短絡的だと思える表現をする人たちもいました。
ラジオ番組で背景事情を知り、死に直面させられる人たちが存在することに驚かされました。

医学が急速に進歩し高度な医療が実現したことによって生じた事象です。
遺伝的要因で死に至るガンを発症する体質の人を特定できるようになり加えて新薬の薬物投与で発症を阻止できます。端的にいえば薬をやめると死につながり、投与を続ける限り延命されます。私が想像すらできなかった現状です。

延命的治療ととらえれば、人工透析、人工呼吸器装着、胃ろうなどと同列に並べられるかもしれません。
問題はその薬物投与に要する費用の高額さにあります。驚くなかれ毎月数千万円単位のお金がかかります。該当患者が死ぬまでずっと。

保険医療費がよく分かっていない私でも、前述の既存の延命治療とは次元が違う療法の出現だと理解できます。どれくらいの国民がこの実情を知っているのか。ほとんど知られていないのではないかと私は推察します。

一般庶民が毎月数千万円の医療費を負担することは不可能です。よって高額療養費制度が改正された場合に「死の宣告」を受けたのと同様になってしまう人たちが実在することが私にも分かりました。

今回私が問題提起したいのは、この延命的治療法が健康保険適用になる際の経緯はどうだったかの検証です。純粋に患者の立場に立ってのものだったのか、それとも製薬業界の利益確保が優先されたのか、です。
決める手順として法案が通ったのか審議会などに決定権があるのかすら知らない国民の無知、無関心に罪があったのでしょうか。

そもそも当該延命治療を健康保険適用にするに際して積極的かつ中心的にはたらきかけたのは誰だったのか。
正義派政治オタクを自称する人がいるのであれば、目先の損得問題で人目を引こうとするのではなく、こっそり裏で進められている重要法案を周知させ掘り下げるネット上での啓蒙活動を期待したいところです。
本来は政治家こそが、たとえ人権派と呼ばれる人たちから激しく糾弾されようとも、重要懸案を国民的議論の場にもっていくべき立場にあります。命がけになるでしょうが。


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