トップページへ

続・酒を飲まなくても肝硬変に

No.24(2002.12.08)


前回載せた我家の愛犬ノノは、さる12月5日午前7時40分に永眠しました。

生まれつき生命力が強い犬だったので回復する可能性もあるのではないかと期待していました。が、おそらく老化のために自然治癒力が弱まっていたのでしょう。

先述したように早い段階で投薬を中止し、また注射針を刺して腹水を抜くなどという荒療治を避け、ホスピスのような看病姿勢を貫きました。
そのお陰か闘病時の苦痛は死に向かって漸減していき、最後に息を引き取る際の苦しみも最小限であったように見受けられました。

ドッグ・イヤーと言われるように犬の成長(老化)の速さが人間の6~7倍だということを早くからしっかりと意識しておくべきだったと今にして思います。病状が悪化して体力が弱まっていくのも人間より速いのですから。

お腹が大きく膨らんでからも最初は大小の排便は短い散歩時にしていました。

まだ歩くことができるうちに尿の方が抑制できなくなったので、おしっこシート(ペット用ペーパーシート)を敷いて対処しました。

手助けし過ぎると脚力が衰えてすぐに歩けなくなってしまうと考えたので、歩けるうちはなるべく歩かせるように努めました。

数週間後には四本足で立ってはいられるものの後ろ足が弱くなったことと膨れたお腹が邪魔になることとで歩行が困難になってきました。
その頃には後ろ足の先に痛々しい床擦れをおこしたので、キハダの粉末を水で溶いたものをガーゼに塗り患部に当てて包帯を巻きました。
そんな状態になっても大便は抱いて屋外の草むらに移動してやった時に自力でし続けていました。

さらに後ろ足が弱まり脱糞の姿勢をとろうとするとしりもちをついてしまうようになったため、ノノの後ろからお腹の両側を両手で支えてあげながら大便をさせたのは死の数日前の1回だけでした。それまで食が細くなっていたのにその前日は驚くほど食欲が旺盛でいつもより沢山食べさせたためか、やや軟便気味でした。

死の前日の朝からは何も食べなくなり目に見えて衰弱していて元気がありませんでした。また、排尿も止まりました。

いよいよかと心配になり、その晩は連れ合いと交代で頻繁に様子を見に行きました。ノノはずっと目を開けていて一睡もしなかったようでした。

翌朝様子を見に行くと割り箸でつかめるしっかりとした大便が脱糞されていました。寝たきりで大便をするのは最初で最後のことでした。

頭を撫でてやると口を開閉しその際にクチャクチャと音がしたことから、口中のネバネバ感で気分が悪いのではと思われました。

連れ合いに死に水を取ってあげるように頼み、彼女は番茶を薄めたものをスポイトで流し込んで口をすすいでやっていました。
すると体力が弱まってからはまったく鳴いていなかったノノが突然前足を突っ張りながら鳴いたのです。

私も急いでそばに行き、それまでずっとしてきたように2人で顔と身体をもんであげたりさすってあげたりしながら話しかけました。
5分ほど経った頃に2人が見守る前で前足を突っ張りながら仰け反って息を引き取りました。

不思議だったのは死の10日前くらいから四つん這いになってもノノが苦しそうでなく、むしろその姿勢が楽になったことです。
それまではノノが自身で這おうとしても腹水で内臓が圧迫されるためか息苦しそうになったり吐き気をもよおしたりしていたので、膝掛けを折り畳みお腹の膨らみ具合に合わせた高さにして胸と前足の下に入れ込んでノノが不快にならないように調整していたのです。

仏教でいうところの四苦、生老病死という不可逆的かつ不可避な自然の摂理に逆らわなければ限度を超えた苦痛は味わわずに済むのでしょうか。

飼い犬の死に接するのはこれで4度目です。犬は死んで楽になることが分かっていても、残された者の愛別離苦は辛いものです。

もっとも日常生活にあっては四苦八苦するのが人生だということを忘れがちになるのが普通ですが。


前に戻る 目次へ戻る 次を読む