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土石流災害に思うこと (6)

No.217(2018.08.13)


二十数年前に私が農村で公民館長(行政区長)を務めていた際に、ちょうど地区で地籍調査が行なわれました。

当地に地縁血縁はなかったものの、役職上調査に立ち会うこととなりました。

地籍調査とは、簡単に言うと私有地間の境界線を当該地権者らの了解を得ながら行政が確定する作業です。

調査後に正確な地積を測定し、その面積に準じて登記簿や固定資産税が修正されるという運びです。

地権者にはあらかじめ境界くいが配布され、地権者間で互いに納得できる境界線を決められた場合は、調査団が入る前に境界くいを打ち込んでおくことが求められていました。

住居のある地目が宅地のところは、隣人間で先祖の代からもめていない限り、たいてい事前に境界くいが打ち込んでありました。

それに対して管理放棄されている山林では、資産価値が低いこともあり、忙しい中地権者同士で事前に現場で協議することは稀でした。

よって調査日時を各地権者に知らせておき、調査当日に確実に立ち会ってもらわなければなりません。

当事者抜きで境界線を決めることができないからです。

当日は第三者である調査団も立ち会いながら、その場で境界線を定めて境界くいを打ち込んでいきます。

境界くいに連番をふりながら、境界の確定後に後日測量の際に使う図面に位置と番号を記入します。

すでに管理放棄されている山林ですから、普段は地権者も立ち入ることがない場所がほとんどです。

ですから境界で地権者間の意見が食い違うことが時々ありました。

権利は有していても相続しただけで正確な境界を知らない人も多々いました。

前述したように一般的に山林の資産価値が高くはないことから、話し合いでだいたい問題なく境界線を決めることができました。


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