1960年代前半にちょっとしたブームを起こした「ポッカ・レモン」という商品を我家でも愛用し、けっこう重宝していました。
レモン果汁が瓶詰めにされていて、柑橘系の酸味が欲しい時にお手軽に利用できる点が画期的だったからです。 しかしその後に驚くべき事実が発覚しました。 原料としていた果実レモンは製造過程においてまったく使われておらず、香料と着色料で合成されたまがい物だったのです。 その当時レモンはまだまだ高級品だったために一般庶民は本物の味と香りに精通していなかった、という状況だったからこそ通用した商法でしょう。 テレビのニュースでも工場の生産ラインの映像とともに大々的に扱われたことを記憶しています。 ポッカは今で言うワイドショー、奥様番組のスポンサーもしていましたから主な標的は専業主婦でした。 食品の偽装販売にも歴史があるのです。 カニに似せた加工食品のように安価な代替品として「レモン果汁風調味料」とはっきりまがい物であることを明示して売ればあれほど大きな社会問題にはならなかったと思います。 当時とは比較にならないほど食生活が贅沢になり、世界中の物を食い尽くす勢いの現代の日本では本物とまがい物ははっきり区別されているのでしょうか。 残念ながら我国の伝統的調味料である味噌、醤油などの加工食品でさえも、一般的な大量生産品の流通経路上には本物はほとんどありません。 敗戦後に食糧事情が悪かった際にとられた臨時措置がそのまま続いていることも一因のようです。 そんな物を食べさせられている消費者が哀れな反面、手抜き製法で堂々と商売をしている製造側は笑いが止まらないでしょう。 そんな馬鹿な、とご立腹した方は一度果物で自家製ジュースを作って飲んでみてください。 市販の天然果汁100%とうたっているものが実は水で薄められていることに気付くでしょう。 情けないことにこの国の法律では水で薄めても「天然果汁100%」と表示してよいようです。 これは一番分かりやすい例で、あとは推して知るべしです。 先日お隣りの国である韓国の物産展に行きマッコ(ル)リという濁り酒を買い求めました。 瓶入りと紙パックの2種類があり、瓶の方は「生」なのでまだ発酵が続いているため空気を抜くことができる構造になっていて、賞味期限の長い紙パックのものとは明確に区別されていました。 これが醸造酒における本当の意味での「生」なのです。 ひるがえって我国では「生」という言葉は使い放題で、消費者も感覚的にしかとらえていません。 また、かなり以前に漬物業界の国際会議において「キムチ」という名称の規定で我国と韓国が対立しているということを知りました。 韓国側が、伝統的な方法で漬けられた物だけが本当の「キムチ」だと主張しているのに対して、我国の業界は化学調味料の力を借りたキムチ風即席漬物も「キムチ」という名前で売りたいとしていました。 最終的に日本側が「勝ち組」になったという結果を知り、とても恥ずかしい気持ちになりました。 もっとも自国の伝統的漬物である梅干や沢庵でさえまがい物が出回っているという恥も外聞もない現状では、そんな風に感じた私の方が少数派かもしれません。 朝鮮半島出身者に対していびつな優越意識をもっているのではないかと思われる同胞を時々見かけます。 我国が経済で成功したことがその根拠だとしたら悲しいですね。 大切なもの(文化)を手放してお金と交換することは人間にとって幸せなことなのでしょうか。 後々になって間違いに気が付いたからといって、お金でその大切なもの(文化)を買い戻せるとは思えませんが。 |
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